ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)は、1632年にオランダのデルフトで生まれ、生涯をその地で過ごしました。15人の子供をもうけ、画家としても一定の成功を収めましたが、43歳という若さで亡くなると、その名声は次第に忘れ去られていきます。しかし、その後、アメリカやイギリスの裕福なコレクターたちが競って作品を収集したことで再評価が進み、現在では世界中の人々に愛される画家の一人となっています。今回は「光の魔術師」と呼ばれるフェルメールの絵画を6点ご案内します



真珠の耳飾りの少女

製作:1665年~1666年頃 マウリッツハイス美術館所蔵
フェルメールが33歳の頃に描いた「真珠の耳飾りの少女」は、彼の優れた芸術的才能と独自のスタイルを象徴する作品の一つです。独特の光の表現と緻密なディテールが、絵画に深みとリアリズムを与えています。暗い背景の中に浮かび上がる柔らかな少女の顔、東洋的な青いターバン、そして耳元で際立つ真珠の輝きに、見る者は一瞬で引き込まれます。「オランダのモナ・リザ」とも称され、フェルメールの卓越した感性が光る至高の名作として、今なお多くの人々の想像力を掻き立てています。

デルフトの眺望

製作:1660年~1661年頃 マウリッツハイス美術館所蔵
『デルフトの眺望』は現存する唯一のデルフトを描いたパノラマ画であり、フェルメールの傑作と言われます。光と影の交錯、印象的な雲が浮かぶ空、そして水面に映る繊細な建物の影に、この作品が傑作と称えられる理由を見て取ることができます。私たちは今、デルフトの街を南側から眺めています。風はほとんどなく、街には静寂が漂っています。この穏やかな空気感は、水、街、空という水平な3つの層で構成された画面からもたらされています。街の建築物も、実際よりすっきりと整理して描かれました。

牛乳を注ぐ女

製作:1658年~1659年頃 アムステルダム国立美術館所蔵
「牛乳を注ぐ女」は、リアルな描写と静謐な雰囲気が際立つフェルメールの珠玉の名画です。作品には、穏やかな光、巧妙な構図など、思わず見入ってしまう要素が随所に散りばめられ、その魅力は尽きることがありません。本作が描かれた17世紀のオランダでは、裕福な市民たちがアートの主な購買層でした。彼らは自宅を彩るため、身近な風景や日常生活を描いた絵画を求めていました。本作もそうした需要に応じて生まれた作品であり、当時の人々の暮らしの一場面を鮮やかに切り取っています。

デルフトの小路

製作:1657年~1658年頃 アムステルダム国立美術館所蔵
フェルメールが生まれ育ったデルフトの風景を描いた作品で、本作は生涯に描いたわずか2点の風景画のうちの1点です。ここに描かれている建物は当時の養老院で、上部に見える縦長の隙間は、侵入者との銃撃戦に備えた「銃眼」と呼ばれるものです。こうした建築は、今日ではほとんど見られなくなりました。窓の戸板やレンガ壁の1つひとつまで繊細かつ丹念に写し取られており、フェルメールならではの極めて高いリアリズムが光ります。約370年前の静寂な風景が、今にも動き出しそうな錯覚を覚える作品です。

ディアナとニンフたち

製作:1655年~1656年頃 マウリッツハイス美術館所蔵
フェルメールの初期の代表作で、名声を確立する前の20代前半に制作されたと考えられています。中央には古典神話における月の女神ディアナ、その周囲には彼女に付き従うニンフ(森の精)たちが、森の空き地で穏やかに過ごす様子が描かれています。画面には安らぎに満ちた静けさが漂い、温かみのある色彩が特徴です。本作はかつて、レンブラントの弟子の作品と考えられていましたが、1885年の修復作業の際、偽造署名の下から「JVMeer」というモノグラムが見つかり、フェルメールの真作であると判明しました。



【コラム】

ヨハネス・フェルメール(Johannes Vermeer)は、1632年にオランダのデルフトで生まれ、生涯をその地で過ごしました。15人の子供をもうけ、画家としても一定の成功を収めましたが、43歳という若さで亡くなると、その名声は次第に忘れ去られていきます。しかし、その後、アメリカやイギリスの裕福なコレクターたちが競って作品を収集したことで再評価が進み、現在では世界中の人々に愛される画家の一人となっています。

窓辺で手紙を読む女

製作:1657年~1659年頃 アルテ・マイスター絵画館所蔵
この作品に描かれているのは、フェルメールが数多く手がけたテーマ「手紙を読む女」の最初の作品です。開かれた窓ガラスに映る女性の横顔も、実にリアルに表現されています。フェルメールの手紙を題材にした作品では、その内容が明かされないことが多くあります。だからこそ見る人は、「何が書かれているのだろう?」「彼女は今、どんな想いなのだろう?」と想像を膨らませるのです。フェルメールは物語を全て描くのではなく、物語が始まる直前、あるいは終わった直後の「沈黙」を描いた画家でした。


光の魔術師「フェルメール特集」一覧

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